劇作家・演出家・ストーリーテラー
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mooncuproof#15 映像配信公演
『In the Cage』
マウスは鳴く。マウスは走る。ケージの内側を。
その全ての行為が美しい祈りである世界。
あらゆる生命が生まれてくる理由はない。
だったらせめて、せめて、その、
運動が、呼吸が、鼓動が、
それが震わせる世界が、美しいものであってほしい。
あらすじ
午前9時、街中の人びとは一斉に携帯電話を取り出す。日々変動する、自分の「個人ポイント」を確認するためだ。
「個人ポイント」は一人ひとりの行動やおさめた結果などを基に、国や企業、学校の判断で決まる社会的信用の尺度である。収入をはじめとして、生活に大きな影響を及ぼすものに関わるポイントの変動に、人々は日々神経をすり減らしていた。
半年前、そんな社会に突如、人々の皮膚に炎症を引き起こす雨が降り始める。環境の悪化により発生したとされる雨に国や自治体はなす術もなく、人々はレインコートなどで自衛をするしかなかった。炎症は一度起きたら全身に拡がっていく。症状が重くなると仕事をすることも困難となるため、国は炎症が進行した国民の個人ポイントを減らすようになっていた。
「個人ポイント」と「炎症を引き起こす雨」、二つの「個人の力ではどうにもできないこと」に囲まれた人々は、それでも「普通の生活」を求めて苦闘する。
mooncuproof 約2年ぶりとなる長編パフォーマンスは、愛知県芸術劇場主催の第21回AAF戯曲賞で一次審査通過18作品に選出された戯曲を改稿したテキストにて、現代社会の息苦しさを描く。
キャスト
アユミ 木谷美絢
トモコ 明日香
ダイスケ 中江正成
シホ 萩谷至史/加藤葉子
*映像では萩谷至史が演じています
チナツ 中村ひより
ヒカリ 平安座美央
トオル 波多野航
医師 土屋由惟
作品コンセプト
大学院で生命科学系の研究室に所属していた私は当時、マウスを使用して動物実験を行なっていた。
遺伝子的なばらつきが最小限になるように人工的に繁殖させられた実験用のマウスたちは、番号をつけられ、マウス室のケージの中で飼育される。そのマウスたちはある日突然、「実験」という名目でケージの外側にいる私たちの手によって薬剤を投与され、解剖され、臓器を摘出され、廃棄される。マウスたちは、ケージの外側に存在する不条理に対しては無力だった。その時、私は思った。ケージの中で不条理な 「外側」に囲まれているのは果たしてマウスだけだろうか、と。
私たち人間も様々な「外側」に囲まれて生きている。それは例えば、政治や資本主義のシステム、地震や パンデミックなどの自然、広大すぎる宇宙、また、自身の身体や精神や遺伝子でさえも、私たちはそれらに対峙した時に無力である。そして、その数々の「外側」は私たちを、ケージの「内側」のマウスたちのように個性が剥奪された存在に変えてしまう。資本主義のシステムは私たちの行動をデータ変え、自然は私たちを単なる「遺伝子の乗り物」と位置付ける。そこでは単一な物差しにより強者と弱者が簡単に分けられ、個は収奪されてしまう。
しかし、私たちには単一な基準で優劣をつけることができない身体や感情がある。絶対的な「外側」に囲 まれた世界の中、誰もが唯一無二であり続けるために、自身の言葉や身体を使って「外側」の様々な力に 抗いながら生きている。それは往々にして不器用で非効率的な営みだが、それこそが私たちの「外側」に 対する「私が私である」ための手段なのではないだろうか。
本作品は、そんなアイデアを基に制作されたパフォーマンス作品である。
【配信期間】
2022年9月2日19:00〜22日23:59
*上演時間は約100分です
【チケット販売期間】
2022年8月23日19:00~9月15日23:59
【チケット料金】
2,500円
【チケット予約フォーム】
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=68161&
【お問い合わせ】
【脚本・演出】
萩谷至史
【キャスト】
チナツ 中村ひより
アユミ 木谷美絢
シホ 加藤葉子/萩谷至史
ヒカリ 平安座美央
トモコ 明日香
トオル 波多野航
ダイスケ 中江正成
医師 土屋由惟
【舞台監督】 吉野斗規
【音楽】 吉本ヒロ
【音響/映像】 大倉栄人
【照明】 佐々木夕貴
【制作】 渡辺奈都
【フライヤー撮影】吉田祥平
【映像撮影・編集】吉田祥平・山崎いおん